山間部の村に点在する数千、数万の震災孤児たちすべてに手を差し伸べることは、私たちのような新興の小さなNGOにとってどう考えても不可能です。そこで第一段階として、代表の船尾がカシミール地域を取材中に知り合った小学校に通うことが困難な家庭環境の子どもたちを対象に、とりいそぎ奨学金を支給していきます。
もし今後このNGOをサポートしてくださる会員が増え、資金的に余裕ができたときには、再び調査を行ない、奨学金を支給する対象を暫時増やしていくつもりです。
震災後、二度目の訪問を終えた2006年6月現在で、把握できているそのような境遇の子どもたちは23人。調査にあたっては、ひとりひとりの家庭環境を実際に確かめるために、居住している家を訪ね、子どもたちの親や親戚に直接面会してきました。23人はまだまだ少ないと感じていますが、調査に時間がかかるため、その結果の数字です。
奨学金を授与する対象となる子どもの選定ですが、以下のような選考基準を設けています。
1:両親が地震によって死亡した。
2:父親あるいは母親が地震によって死亡した。
3:家族が居住していた土地と家を失った。
4:両親共にあるが、怪我などで入院中、あるいは両親に収入がまったくない。
このような基準で選考した小学生に対し、ひとりあたり年間5,000ルピー(約1万円)程度の奨学金を、小学校を卒業するまで最長5年間支給いたします。5年間としているのは、パキスタンでは小学校は5年制なので、現在の1年生が卒業するまでという意味です。
奨学金は、子どもの親か親戚に直接支払われます。毎年、支給は直接手渡しで行ない、その際に子どもが約束どおり小学校へ通ったかどうかを確かめます。場合によっては、小学校の教師や校長にその証明を求めます。パキスタンの現地に数名の事業協力者を置き、日本サイドからいつでも奨学金授与者たちの状況を把握できるように努めるつもりです。
年間1万円という数字は日本人の感覚ではたいへん少ないと思われるかもしれませんが、日本とパキスタンでは経済格差の関係から物価が異なるためです。パキスタンでの1万円は日本の10万円ぐらいに匹敵するのではないでしょうか。
小学校そのものにはほとんど授業料等はかからないのですが、奨学金は制服代やノートなどの文具代に当ててもらうという意味のほか、被災のダメージからなかなか立ち直れない彼らの家族に対しての支援金という意味合いを含んでいます。
奨学金の支給というのはややもすると先進国の人間から途上国の人間への一方的な「援助」になってしまうおそれがあります。それも必要なことだとは思いますが、本NGOの目的はそれだけにとどまりません。互いに交流することによって、異なる文化や考え方を持つ人たちから積極的に学ぶ機会を、サポート会員である日本の人に提供したいと考えています。
たとえば被災地に暮らす人のほとんどはイスラム教徒ですが、私たち日本人はイスラムについて何も知らないに等しいと思います。彼らがどのような習慣を持ち、どのようなことを考えているのか。直接・間接的にそういった人たちと関わりを持つことが、自分たちの世界を広げることにつながるのではないでしょうか。
被災地へのスタディ・ツアーも計画しています。現地の状況を直接この目で見、彼らの生活に触れることにより、私たちも彼らから何かを学ぶことができます。それは学校での勉強やニュースを聞くだけでは絶対に得られないナマの体験なのです。
互いに信頼しあえる関係。ウジャマー・ジャパンの活動目標はあくまでもその点にあります。